2017年2月12日日曜日

青い日記帳×オルセーのナビ派展ブロガー特別内覧会

2月9日(木)に開催された「青い日記帳×オルセーのナビ派展ブロガー特別内覧会」に行ってきました。

「オルセーのナビ派展」は、現在、三菱一号館美術館で開催中の展覧会で、キャッチコピー「はじめまして、ナビ派です。」のとおり、日本で初めて開催される本格的なナビ派展です。

入口から第一室に入ると、ナビ派の画家たちに影響を与えたゴーガンの作品がお出迎え。
左から、ゴーガン「《黄色いキリスト》のある自画像」、「扇のある静物」、そしてベルナールの「炉器瓶とりんご」。



この展覧会は6章構成になっていて、第一章は「ゴーガンの革命」です。
このコーナーにはゴーガンと、ブルターニュ地方のポン=タヴェンでゴーガンの影響を受けたベルナール、セリュジエの作品が展示されています。

ゴーガンはセリュジエにこう言いました。

「これらの木々がどのように見えるかね?これらは黄色だね。では、黄色で塗りたまえ。これらの影はむしろ青い。ここは純粋なウルトラマリンで塗りたまえ。これらの葉は赤い?それならヴァーミリオンで塗りたまえ。」
(会場では、壁に掛けられたアクリル板にこの言葉が書かれています。)

このようなゴーガンの助言を受けてできた作品がセリュジエ「タリスマン(護符)、愛の森を流れるアヴェン川」でした。


三菱一号館美術館に来ていつも思うことですが、展示室内の内装がとても素晴らしいです。暖炉の上の絵画を見ていると、美術館というより、まるで洋館の応接間で作品を鑑賞しているようなとても心地よい気分にさせてくれます。

第二章は「庭の女性たち」です。
このコーナーには庭の女性たちを好んで描いたドニやボナールの作品が展示されています。

重厚なドアを開けて居間に入ると、大きな絵が視界に入ってくる。
こういったくつろいだシチュエーションがたまらなくいいです。
作品はドニ「ミューズたち」です。

第三章は「親密さの詩情」です。
このコーナーには、ボナール、ヴァロットン、ヴュイヤールの室内情景を描いた作品が展示されています。

さてここで三菱一号館美術館の高橋館長と今回のブロガー特別内覧会のモデレーターTakさんの楽しいトークをおうかがいすることができました。

Takさんはこのたび『カフェのある美術館』(世界文化社)を出版されたので、そのことも紹介されていました。
左がTakさん、右が高橋館長
1986年に開館したパリ・オルセー美術館に1984年の準備室時代から係わっていた高橋館長。その当時のお話から始まりました。

「オルセー美術館は当時『印象派美術館』と呼ばれていたほど印象派が中心の美術館で、ナビ派で知られていたのはボナールくらいで、他の画家はほとんど知られていませんでした。オルセー美術館開館当時、ナビ派の作品は暗がりに置かれていました(笑)。ナビ派は今ようやく再評価の途上にあると言えるでしょう。」
「現在のオルセー美術館のギ・コジュヴァル館長は、もともとナビ派を研究している方でした。私もナビ派との付き合いは長く、1980年に国立西洋美術館に入って、ドニ展(1981年)を開催したのですが、そのときドニ家の人たちが来られて親交を温めました。」
「ギ・コジュヴァル館長は今年3月にオルセー美術館の館長を退任されるので、今回の展覧会はオルセーでの最後の仕事です。4月からはナビ派センターに行かれることが決まっていますが(笑)。今回の展覧会の開催にあたって、ギ・コジュヴァル館長には作品の選定からかかわっていただきました。そのため出展作品はどれもトップレベル、トップクラスのものばかりです。」
「ナビ派は二次元の絵の中に三次元のイリュージョンを描かずに平面的なものを描きました。その点で浮世絵になじんでいる日本人に合っているのかもしれません。それに西洋では隠ぺいされていた『やさしさ』『かわいさ』が前面に出ているのもナビ派の特徴です。これは対象を見る目線が低いところにあるということです。」

「一方で現代的な側面もあって、表面の『かわいさ』の裏にある不条理やボナールの作品に潜む『影』も見逃すことはできません。」
こう説明されてから、高橋館長は後ろに展示されているヴァロットンの「髪を整える女性」の不自然に曲がる椅子の脚、ありえないところにある影、ボナールやヴュイヤールの作品に潜む影の部分について解説されました。

左からヴァロットンの「髪を整える女性」「室内、戸棚を探る青い服の女性」「化粧台の前のミシア」。

第四章は「心のうちの言葉」です。
このコーナーには、ナビ派独特の色使いの肖像画や自画像が展示されています。
左からヴュイヤール「八角形の自画像」、「読書する男性」、ドニ「18歳の画家の肖像」。ここでも暖炉がいい雰囲気を出しています。



第五章は「子ども時代」です。
このコーナーには、ナビ派の画家たちの、子どもたちに対する慈しみに満ちた作品が展示されています。もちろん、子どもに忍び寄る影も見逃すことはできません。

ドアの横にさりげなく飾られるヴァロットンの「ボール」
こちらは高橋館長おすすめのヴュイヤール「公園」。
ナビ派のパトロンであったナタンソン家の応接間兼食堂の装飾画として制作されたもので、当初あった9枚のうち5枚がオルセー美術館に所蔵されています。



第六章は「裏側の世界」です。
このコーナーには、ナビ派が表現しようとした内的生活や夢や想像の世界を描いた作品が展示されています。
写真は、ロシアの近代美術コレクター、イヴァン・モロゾフの私邸の装飾壁画のためのドニの習作「プシュケの物語」。

高橋館長が言われていたように、本当に作品の質が高くて、とても見応えのある素晴らしい内容です。この春おすすめの展覧会です。
5月21日(日)までです。お見逃しなく。

詳細は展覧会の公式サイトをご覧ください。
 ↓
オルセーのナビ派展

※掲載した写真は、主催者の許可を得て特別に撮影したものです。